【有限会社榊原工機】代表取締役 榊原崇さん

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インタビュー

ものづくりの現場で確かな技術を提供し続ける有限会社榊原工機。1989年の創業以来、多品種少量生産を強みとし、多様なニーズに応える柔軟な体制を築いてきました。創業者であり現在も経営を牽引する榊原社長に、創業当時のエピソード、事業の強み、社員と共に成長する経営哲学、そして『ハタラク』ことの意義についてお話を伺いました。


有限会社榊原工機 / 代表取締役 榊原崇
1963年愛知県春日井市生まれ。名古屋工業大学二部電気情報工学科を卒業後、町工場での勤務を経て独立。廃業した喫茶店跡で一人から事業をスタートし、1996年に自社工場を設立。2020年からのコロナ禍の中で立ち上げたオリジナルブランド「SASAKIGEAR」は、クラウドファンディングで1,150万円もの支援を達成し、新たな事業として展開中。機械部品の製造を通じ、生まれ育った春日井市への恩返しのために事業を行っている。

創業と会社概要について教えてください。

当社は1989年5月5日に機械部品の切削業を主要事業として創業しました。当時、私は25歳で1,600万円もの借金をし事業をスタートしましたが、バブル末期という時代背景と、7年間の会社勤務での収入実績を評価され、自己資金ゼロでの創業が可能でした。家の近くにあった廃業した喫茶店を購入し、機械を2台導入してスタートしました。父親も同じ業界で仕事をしていた関係で、その人脈などは活用させてもらいながらも、金銭的な援助は受けずに、完全に独立した形での創業となりました。
社員構成については、現在(2025年2月)、私と妻を含め13名の体制になっています。社員9名、パート2名で、男女比は男性9名、女性4名と、製造業としては女性の割合が比較的高く、年齢構成も40歳以下が中心となっているのが特徴ですね。また、ベトナムからのエンジニアも2名採用しており、実習生ではなく正社員として日本人と同じ待遇で雇用しています。
現在、創業から36年目を迎え、地域に根ざした製造業として成長しながらも、技術力と人材育成に重点を置き、社員一人一人の専門性を活かせる体制を整えています。

事業内容と会社の強みについて教えてください。

当社は機械部品の切削業を主に行っており、世の中の様々な機械(マザーマシーン)に使われる部品を製造しています。特徴としては、1個や2個の少量オーダーから、50個程度の中規模な注文まで対応できることですね。多くの会社が特定の機械に特化して製造を行っているのに対し、弊社は多品種少量生産を得意とし、ワンストップで対応できる体制を整えています。
取引先についても、以前は大手企業との取引が中心でしたが、現在は50~100人規模の中小企業との取引も増えています。取引先の多様化を進めることで、特定企業への依存度を5%以内に抑える経営の安定化を図り、バランスの取れた事業構造を維持しています。

経営理念と会社運営の方針について教えてください。

約10年前に『共にしあわせになる、幸せ』という経営理念を策定しました。この理念は、取引先や社員とのWin-Winの関係構築を目指しています。特に重視しているのは、取引先の営業担当者からの「ありがとう」という言葉を引き出せるような仕事の質の提供です。業務の特徴として、1日で完結する仕事が多く、社員が自身の仕事に区切りをつけやすい環境であるため、社員一人ひとりが1日の仕事を終えて気持ちよく帰宅できることを大切にし、それが家庭環境にも良い影響を与えると考えています。
また、ワークライフバランスを重視しており、土日祝日の休暇確保や有給休暇の取得率100%近くを実現しています。社員が働きたいときに働き、休みたいときに休める環境作りに力を入れています。

社内の雰囲気や働き方への工夫はどんなことがありますか?

社内の雰囲気として、当社の社員は理系出身者が多く、おとなしい雰囲気ですが、最近は展示会やイベントへの出展などを通じてコミュニケーションを活性化しています。朝礼で『職場の教養』の輪読や、サイコロを振って出た目の社員がその感想を発表することで、コミュニケーションが活性する仕組みを導入しています。
また、現場に3人のリーダーを配置し、責任と権限を委譲することで自主的な業務運営を促進しています。社長である私は極力現場への直接的な介入を控え、必要な時のみアドバイスや指導を行う方針を取っています。信頼関係に基づくマネジメントへの転換を図った結果、社員の成長と世代交代の準備が進められていると感じています。
過去10年間での離職者が1名のみという低い離職率がこの経営方針の成功を示しているのではないかと思います。

社員の採用において重視されるポイントはありますか?

やはり明るく素直な性格が理想ですね。会社の雰囲気に大きく影響するので、暗いより明るい方が望ましいです。また、実力があり、特にプログラミングができる方は歓迎します。学歴は特に問わず、20代に限り未経験者もOKですが、特に工業系の経験や学歴がある方が望ましいですね。

趣味や休日の過ごし方について教えてください。

もの作り、草野球、ゴルフを楽しんでいます。特にもの作りに関しては、趣味と仕事で培った技術を活かした結果、実益にもつながっており、実際、コロナ禍での事業多角化の一環として始めたオリジナルブランドとして開発した商品は、クラウドファンディングで1,150万円の支援を集めるなど、大きな成功を収めています。野球については中学時代から続けており、60歳を超えた現在も現役で継続しています。また、キックボクシングジムにも通うなど、積極的に体を動かすことを心がけていますね。
休日は、必ず家族との時間を確保して一緒に過ごすことにしています。食事の時間を大切にし、家族とのコミュニケーションを重視しています。社員にも家庭を大切にしてほしいと思っているので、まずは私自身が実践するようにしていますね。

最後に、『ハタラク』ことの意義についてお聞かせください。

若い頃は生活維持のための手段として働いていましたが、60歳を超えた今は、『みんなのため』『次に続く人のため』『傍を楽にするため』という意識が大きくなっていますね。 周りから『ありがとう』と言われる会社を目指し、また、一人娘を持つ父親として、自身の働く後ろ姿を通じて次世代に何を伝えられるかを意識しています。
現在は、コロナ禍の影響で売上が最盛期の半分程度まで減少し、厳しい経営状況が続いていますが、社員が1,000万円の給与を得られるような会社にすることが目標です。ただ単に利益を追求するのではなく、関わる全ての人々が幸せになれる経営を心がけています。


榊原工機は、創業以来、一貫して技術力と柔軟な対応力を武器に、多品種少量生産の分野で成長を続けてきました。社員一人ひとりの専門性を尊重し、働きやすい環境を整えることで、安定した経営と高い定着率を実現しています。「共にしあわせになる、幸せ」という経営理念のもと、取引先との信頼関係を築きながら、これからも地域に根ざした製造業として歩み続けます。


【有限会社榊原工機】

〒486-0932
愛知県春日井市松河戸町2丁目5-15
TEL. 0568-36-1628
FAX. 0568-36-1629
URL. https://www.sakakibara-kouki.co.jp

<オリジナルブランドサイト>
URL. https://sakakibara55.base.shop