【丸普窯業原料有限会社】代表取締役 伊藤大悟さん

1952年の創業以来、70年以上にわたって食器など窯業の原料製造を続けてきた丸普窯業原料有限会社。その三代目として2019年に代表取締役に就任した伊藤大悟さん。伝統を守りつつ、次代に向けた挑戦を続ける伊藤さんに、事業への想い、地域との関係、そして「ハタラク」ことの意義について伺いました。
丸普窯業原料有限会社 / 代表取締役 伊藤大悟さん
1984年愛知県豊田市(旧・小原村)生まれ。愛知淑徳大学卒業後、森村商事株式会社で商品開発に従事。2011年に家業である丸普窯業原料有限会社へ入社し、後継者として経営力を高めるため、2016年に名古屋商科大学ビジネススクールに入学しMBAを取得。その後2019年に事業承継。 2020年には採石業の新展開として「マウンテンマテリアルズ」ブランドを立ち上げ、地元小原地区と共に地域活性に精力的に取り組んでいる。
会社の歴史と会社概要について教えてください
当社は1952年に祖父が創業し、1975年に法人化されました。創業者である祖父から父へ繋ぎ、その後2019年に三代目として私が事業を継ぎました。現在(2025年4月)は正社員6名、パート1名の計7名で運営しています。
主な事業は、大きく分けてプラント業と採石業の二つとなり、自社の開発現場で、窯業に使用する原材料の採掘から精製、出荷までを一貫して行っており、それによって安定した品質を保っています。

会社の経営方針と地域との関係について教えてください
採石業は、地域の理解と協力なくしては成り立ちません。土地所有者の方と土地の売買や賃貸借契約を交わし採掘を行うのですが、信頼関係を築くにはとても時間がかかります。実際に契約に至るのに15年かかったこともあります。
また、どこでも掘って良いわけではなく、調査や行政手続きを経てから伐採・採掘に入るまで、4〜5年かかるケースもあります。そのため、地域貢献活動に積極的に取り組み、地域との信頼関係を築くことを大切にしています。地元の理解が事業の継続には欠かせない要素であり、地域貢献が会社のブランディングにも繋がっていますね。
会社の強みや長所はなんですか?
業界の中では私自身も含めてかなり“若い”方だと思います。採石や鉱山関連の業界では60〜70代が中心という中で、世代交代が進んでいるのは当社の特徴です。その分、柔軟な発想で事業のピボットや改善ができるのが強みです。
また、規模としては決して大きな会社ではありませんが、「環境」や「雇用バランス」に対する姿勢が評価され、豊田市が認証する「豊田市SDGs認証制度」の上位4社(シルバー上位認定)にも選出されるなど、行政機関からも取り組みが評価されている点も励みになっていますね。
無駄を出さず、使えるものは再利用するという姿勢も徹底しています。例えば、採石現場で出た未利用部分もできるだけ資源として活かすよう工夫しています。鉱山と聞くと閉鎖的な印象を持たれることが多いのですが、当社ではできるだけ“オープン”にして、地域や他分野の方ともつながるようにしています。
また、山の恵み、山の幸を扱う専門店「マウンテンマテリアルズ」という新ブランドを立ち上げ、一般の消費者向けに環境に配慮した商品開発を進めています。地域資源を活かした製品づくりを通して、持続可能な社会への貢献を目指しています。

社内の雰囲気や、働き方の工夫について教えてください
社内の雰囲気は「真面目で明るい」です。社員は皆、仕事に対して真摯に向き合っており、新しく入った社員や周りも「真面目な会社ですね」と言ってくれますね。
働き方についても、有給休暇の自由取得や長期休暇の推奨など、柔軟な働き方を意識しています。土用の丑の日には社員全員と家族に鰻を配ったり、お中元・お歳暮の品を小分けして配ったり、感謝を伝えることを大切にしています。
さらに、資格取得を会社でサポートしており、費用の負担や合格時にはお祝いも出します。若手社員が会社のTシャツやポロシャツをデザインするなど、自発的な取り組みも増えてきています。
社員を採用する際のこだわりを教えてください
学歴は問いません。それよりも「明るさ」「真面目さ」「責任感」「チームワーク」を重視しています。未経験でも、成長意欲さえあれば一から丁寧に教えます。むしろ、過去の経験にとらわれない素直な人の方が、当社には合っていると感じていますね。

趣味や休日の過ごし方について教えてください。
趣味は、健康を意識した松葉茶やスムージーを飲むこと、サックスを吹くことや音楽を楽しむこと、そしてアウトドア活動などですね。週末は友人と食事に出かけたり、旅行を楽しんだりしています。マラソンにもチャレンジし、ゴルフやキックボクシングなど、様々なスポーツにも興味を持っており、アクティブなライフスタイルを大切にしています。

最後に御社にとっての『ハタラク』ことの意義を教えてください
傍(はた)を楽(らく)にし、彩りや快適な暮らしの下支えとなることが当社のハタラクの意義です。
大量生産される製品・商品を支える原料として『安定供給・高品質』をポリシーに日々の業務を行っています。電気を安定供給するための碍子や、日常生活で使う食器や衛生製品(トイレ・風呂など)の原料として、当社の製品が下支えになっています。
また、100年以上愛され続ける会社を目指すという理念に基づき、地域経済循環を常に意識した活動を大切にしながら、地域の『笑顔あふれる縁の下のチカラ持ち』 であり続けられるよう、働き続けて行きたいと思います。
創業から70年以上の歴史と地域との信頼関係を大切にしながら、新たな挑戦を続ける丸普窯業原料有限会社。伊藤大悟さんの真摯な姿勢と未来へのまなざしが、地域資源の新しい価値を生み出しています。明るく真面目な社風を大切にし、社員一人ひとりが成長できる環境を提供しています。また、新しい事業展開を通じて、地域資源の有効活用と環境保護に取り組み、今後の成長と次の世代のものづくりが静かに、でも確かに育まれています。
【丸普窯業原料有限会社】
〒470-0512
愛知県豊田市東郷町野田ケ平383
TEL. 0565-65-1010
URL. https://www.marufu-kouzan.jp
<「山の恵み、山の幸」の専門店 マウンテンマテリアルズ>
URL. https://mountain-materials.stores.jp/