【HUGME(ハグミー)】代表 髙橋悠夏さん
「助産師」と聞いて、あなたはどんな姿を思い浮かべますか?出産に立ち会う医療職。そんなイメージが一般的かもしれません。しかし、助産師の仕事はもっと広く、深く人の暮らしや心に寄り添う仕事なのです。今回は、助産師として命の現場に向き合いながら、“出産に立ち会うだけではない”助産師の姿を体現している「HUGME(ハグミー)」代表の髙橋悠夏さんに、仕事観や人生観、そして『ハタラク』ことの意味についてお話を伺いました。
HUGME(ハグミー) / 代表 髙橋悠夏さん
1993年愛知県春日井市生まれ。岐阜医療科学大学助産専攻科卒業後、産科に特化した病院で経験を積み、2022年に開業助産師として「HUGME」を設立。子育てサロン運営や講師業、マタニティ・ニューボーンフォトも手がけ、2024年には助産師仲間と協会を設立。産前産後のケアを中心に、多職種と連携しながら子育てがしやすい環境づくりに取り組んでいる。
職業
開業助産師(訪問型助産院運営)
仕事内容
・産後の母親に対する心身のケア(訪問型)
・幼児~大人向けの性教育講座(最年少対象:3歳児)
・女性のホルモンバランスや更年期に関する相談対応
・子育てサロンの運営
・自宅出産支援(助産師2名体制)※現在HUGMEでは休止中
・助産師チームによる協会設立・講座運営─開業助産師(訪問型助産院運営)とは?
助産師が独立して助産院を開業し、主に自宅や利用者の自宅を訪問して助産サービスを提供する形態を指します。分娩を取り扱う助産院だけでなく、妊婦や産後の母親、新生児へのケア、母乳育児相談など、幅広いサービスを提供します。
まずは、HUGME の事業について教えてください
HUGMEは 2022年に開業した訪問型の助産院で、今年で3年目を迎えます。いわゆる「出産に立ち会う」だけではない助産師の仕事として、具体的には、産前・産後のお母さんの心と体のケア、3歳〜中高生向けの性教育講座、女性ホルモンや更年期に関する相談対 応、そして子育てサロンの運営など多岐にわたります。子育てに関してというと保健師さんも幅広く活躍されていますが、助産師はより“子どもと女性”に特化した専門職です。出産後の不安や体調不良に寄り添い、医療的知識と人間的なつながりの両面からサポートを行っています。

助産師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、高校3年生の頃。赤ちゃんが好きだった私に、母親が「助産師っていう職業があるよ」と教えてくれたことが始まりでした。当時は助産師という存在をよく知らなかったものの、調べていくうちに「赤ちゃんとお母さんのために寄り添える仕事」だと知り、自然と目指すようになりました。私の助産師としてのキャリアは、総合病院での勤務を経て、年間900件以上の出産を扱う個人病院で経験を積み、個人事業として開業という流れです。さまざまな現場を経験する中で、助産師の仕事の幅広さや、働き方の違いを実感することができました。
お仕事の魅力ややりがいを教えてください
この仕事にはやりがいしかないですね。赤ちゃんの誕生という、人生最大級のHAPPYな瞬間に関われることは、何にも代えがたい経験です。ただし、どんなお産にも命のリスクが伴います。緊急時には一瞬で判断しなければならない場面もあり、プレッシャーは大きいです。それでも、関わった方から「あなたでよかった」と言ってもらえることが何より嬉しいです。助産師としての専門性だけでなく、“その人自身”に信頼が寄せられたことは大きな喜びですね。

開業助産師としての働き方には、どのような特徴がありますか?
現在のHUGMEは訪問型のスタイルで、自宅への産後ケア訪問や、地域での子育てサ ロンの開催、行政や保育園から依頼された性教育講座などを行っています。昨年からは、4人の助産師仲間と一緒に協会を立ち上げて、自宅出産のチーム体制も整えました。助産師という仕事は一人ではできないことも多いので、助産師同士の連携は欠かせません。命を預かる現場だからこそ、信頼できる仲間とのチームワークが何より重要だと感じています。
助産師になるためには、どんなステップが必要ですか?
まず、看護師の国家資格を取得することが前提です。そのうえで、助産師の専攻科や大学院に進んで資格を取る必要があります。さらに、10件以上の出産に直接介助として立ち会うことが必要となります。また、日本では現在、助産師になれるのは女性のみという決まりがありますが、「命を預かる責任」と「生まれる喜び」を日々感じられる、本当に価値のある仕事だと思います。

お仕事の中で大変なことや課題はありますか?
やはり出産は命に関わる現場です。急変が起きたときの対応は非常に重要で、準備や判断力が求められることが多くあります。また、近年は訴訟リスクの高さから、産科医の減少が深刻な問題になっています。正常分娩なら医師がいなくても出産は可能ですが、診断や管理が必要な場面も多いため、医師との連携は不可欠です。安心して出産できる体制を守るには、助産師と医師、それぞれの役割を尊重し合いながら協力することが必要だと感じています。
趣味や休日の過ごし方について教えてください
今の趣味は「子育て」ですね。2歳と4歳の子どもたちのママとして、平日は仕事と子育てに奮闘する日々です。休日にはとにかく家族・子どもたちと過ごしています。外出をしたり、最近はもっぱら水遊びなどで、笑顔をつくることを何より大切にしていますね。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?
私にとっての『ハタラク』とは、ひとつは“自分の存在価値の証明”であり、もうひとつは“笑顔をつくっていく方法”です。 ただ専門的な知識や技術を提供するだけではなくて、「あなたでよかった」と思ってもらえるような関わり方を目指しています。そうして生まれた笑顔が、その人だけでなく、その人の家族の関係性や未来にまで広がっていく。それが、私にとって何よりのやりがいですね。
助産師という仕事の奥深さを伝えてくれた髙橋さんの言葉。医療と教育、心のケア、そして家族の笑顔を支える仕事。その姿はまさに、“人と心に寄り添う専門職”でした。命を迎えるだけではなく、“これから”を支える仕事として、HUGMEは子どもたちと家族の未来を明るく照らしています。
【HUGME(ハグミー)】
URL. https://www.hugme-nagoya.com

