【有限会社武藤設計】 代表取締役 武藤弘己さん
世の中にまだないものを、自分の頭の中で考え、形にしていく。その仕事を、もし「遊び以上の喜び」だと言い切る人がいたら、少し気になりませんか。今回お話を伺ったのは、有限会社武藤設計・代表取締役の武藤弘己さん。1978年に個人事業として創業し、1988年に法人化。長年にわたり機械設計の世界を歩み続け、現在は特許を取得した「切りくずの出ない切断機」をはじめ、唯一無二のものづくりに取り組んでいます。これまでに20〜30件以上の特許に関わってきました。幼い頃からものづくりに親しみ、設計の道を進み、80歳を超えた今もなお「新しい自分を発見している」と語る武藤さん。
なぜこの仕事を選んだのか。どんな面白さがあり、どんな厳しさがあるのか。そして、武藤さんにとって『ハタラク』とは何なのか。機械設計・製造という仕事の奥深さを、じっくり伺いました。
有限会社武藤設計 / 代表取締役 武藤弘己さん
1944年三重県いなべ市生まれ。大同工業大学卒業後、株式会社大同機械製作所に入社し、9年間の勤務を経て1978年に個人事業主として独立。1988年に有限会社武藤設計を設立。リーマンショックを機に設計から製造へと事業を拡張し、機械本体の開発まで手がける。約40件の特許を取得し、現場課題を技術で解決する姿勢で、50年にわたりものづくりに向き合っている。
職業
機械設計・開発を行う製造業
仕事内容
お客様の「こんな機械がほしい」に合わせて、世の中にまだない機械を考え、設計し、形にしていくお仕事です。特許を取得した『切りくずの出ない切断機』のように、他社にはない独自の機械づくりに取り組んでいます。ただ図面を描くだけではなく、「どうしたらもっと良くなるか」を何度も考え、試作や改良を重ねながら完成させていくのが特徴です。自分のアイデアが本物の機械になり、実際の工場や研究現場で役立つところに、大きなやりがいがあるお仕事です。
これまでの経歴や、ものづくりに興味を持ったきっかけを教えてください
父が木工関係の仕事をしており、自宅の離れが仕事場になっていたため、幼い頃からその空間に出入りしながら自然とものづくりに親しんできました。工業高校に進学した後、勧めもあって大同工業大学へ進み、在学中は機械設計のアルバイトにも打ち込みました。卒業後は大同機械製作所に入社し、約9年間勤務しました。4,000トンプレスの設計など大型機械にも携わり、強度計算までやり切った経験が大きな自信につながっています。この頃から、新しいものを考えることへの興味が強まっていきました。

御社の創業の経緯を教えてください
個人事業主として独立したのは1978年で、法人として設立したのは1988年です。迷いはありませんでした。好きなことを自分の仕事にしたいという思いが強く、「人を雇えばもっといろいろできる」と自然に考えてスタートしました。現在は3名体制で運営しています。
創業当初は、大学時代に関わりのあった会社から継続的に仕事をいただき、事業の基盤を築くことができました。木工機械の設計を中心に、ベニヤ板製造の機械などにも携わる中で発明への関心が深まり、これまでに20〜30件ほどの特許取得につながっています。現在は「切りくずの出ない切断機」に特化して取り組んでいます。
お仕事の内容を教えてください
現在は製造業を営んでいます。さまざまな経緯を経て、15年前から「切りくずの出ない切断機」を中心に製造しています。HPで宣伝をしていた時に依頼を受け、試作品をつくってみたところ手応えがあり、補助金も活用しながら、1,000万円規模の機械製作へとつながっていきました。
以前は設計を主軸とし、主に自動車関係の設計を手がけていました。過去にあるものをアレンジして、改良した機械を作ってくれないかという話もあり、大手メーカーとのやりとりが多かったです。
リーマンショックを機に会社のスリム化を進め、特許取得を中心に特殊なサービスを提供する会社に変わっていきました。

この仕事のやりがいや魅力は何ですか?
55歳頃に、設計の仕事が自分の天職だと実感するようになりました。若い頃からこの仕事以外は考えられませんでしたが、年齢を重ねる中で、頭の中のアイデアがよりリアルに形になっていく感覚が強まり、「自分がやるべき仕事だ」と腹落ちしたんです。今でもふとした瞬間に発想が浮かび、それを形にできることにやりがいを感じています。自分の手で組み上げていく感覚は、小学生の頃にプラモデルを作っていた時の楽しさに近いですね。ものづくりの中で、自分の役割や使命を果たしている実感があることが、この仕事の魅力だと思っています。
お仕事に対する姿勢や考え方を教えてください
製造業は縁の下の力持ちのような存在だと思っています。自分にはその立ち位置が向いていると感じています。そして私1人ではなく、みんなで支え合いながら、一緒に考え、作り上げていく環境があります。
特許や発明は特別なひらめきというよりも、徹底的に考え続けることから生まれるものだと思っています。一つの形が見えても、もっと良くできないか、別の方法はないかと考え続けることが大切です。機械全体だけでなく細部まで突き詰め、必要であれば自分で試作や実験も行います。そうした積み重ねが独自の技術につながっていく。人が考えないようなところまで考え抜き、粘り強く向き合う姿勢が重要だと感じています。

このお仕事に就くにはどうしたらいいですか?
まずは、工業高校や大学、そして就職先での現場経験を通して、ものづくりの基礎をしっかり身につけることが大切だと思います。ただ、それ以上に必要なのは「考え続ける力」です。なぜそうなるのか、もっと良いやり方はないか、別の構造で実現できないかと、常に問い続ける姿勢が重要です。
教わった通りにやるだけでなく、自分で考え、試し、また考える。その積み重ねが新しい技術や発想につながっていきます。正解が最初からある仕事ではないからこそ、考えることを楽しめる人には、とても面白い仕事だと思います。
このお仕事の厳しさや大変さを教えてください
楽しさの方が大きいので大変さを強く感じることはあまりありませんが、お客様ごとに求めるものが異なるので、自分の設計が本当に最適かどうかは常に考え続けています。納めるまでは心配なところもありますね。ただ、その先で「この装置で貴重なデータが取れた」「新しい開発につながった」といった言葉をいただけたときは、大きな喜びを感じます。
自分の仕事が表に出ることは多くありませんが、ものづくりの現場を支えている実感があることは、ものづくり冥利に尽きるなと思います。

子どもの頃の夢を教えてください
特にやりたいことはありませんでしたが、ものづくりに対する想いは幼少期からあり、自分の生きる道を満たしたいという気持ちはあったと思いますね。つくったものを見て、両親が喜んでくれたらいいな、程度の感覚だったと思います。現在の仕事を考えると、夢が叶っていると言っても過言ではないと感じます。
趣味や休日の過ごし方を教えてください
あえて趣味を挙げるとすれば、読書やクラシック音楽を聞くことですね。休みの日はぼんやりとしながらものづくりのことを考えていることが多いです。食事をしている時でも、頭の中にこびりついているような感じで次の製品のことを考えていることがあります。朝起きた時にふっと閃くこともあるんですよ。
最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?
自分に与えられた使命を果たし、この世にまだないものを生み出して、人に喜んでもらうことだと思っています。
それは単に生活のための労働ではなく、遊び以上の喜びであり、自分の生き様です。仕事を通して新しい発想に出会い、自分でも知らなかった自分を発見していく。そんな「自分を発見する旅」のような感覚があります。いくつになっても、まだ見ぬ自分に出会えるのが、この仕事の面白さだと感じています。
有限会社武藤設計の仕事は、誰も作ったことのない機械を考え、試し、形にし、世の中のものづくりを支えています。そこには、確かな技術と、長年積み重ねてきた知恵と、簡単には真似できない発想が息づいています。そして何より印象的だったのは、武藤さんが今もなお、仕事を通して未来に向かっていることでした。過去の実績にとどまるのではなく「まだ見ぬ新しい自分」を探し続けている。その姿勢こそが、有限会社武藤設計という会社の魅力なのだと思います。
もしあなたが、ただ作業をこなす仕事ではなく、自分の頭で考え、工夫し、形にし、誰かの役に立つ実感を持てる仕事をしたいなら。そして、ものづくりの奥深さにワクワクできるなら。武藤設計のような仕事は、きっと面白いはずです。「まだ世の中にないもの」を生み出す現場には、働くことの本質的な面白さが詰まっています。
【有限会社武藤設計】
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