【原田写真館】 代表 原田立朗さん

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教えてお仕事

カメラマンの仕事と聞くと、カメラを構えて、きれいな一枚を残す仕事をイメージする人が多いかもしれません。けれど、原田写真館代表の原田立朗さんの話を聞いていると、この仕事は単に“写真を撮る仕事”ではないことが見えてきます。写真は、撮ったその瞬間だけで価値が決まるものではありません。何年も経ってから、あるいはもう二度とその瞬間に戻れなくなってから、「撮っておいてよかった」と思えるものでもあります。1946年創業、2026年で創業80周年を迎える、祖父の代から続く写真館を受け継ぎ、3代目としてカメラマン兼フォトスタジオ運営を行う原田立朗さんに、写真の仕事のやりがいと『ハタラク』ことの意味を伺いました。


原田写真館 / 代表 原田立朗さん
1972年愛知県豊田市生まれ。中京大学卒業後、写真館で5年間修行を積み、2002年に原田写真館へ入社。2006年に代表就任、2008年にはコテージスタジオを開設し、スタジオとロケ撮影の基盤を構築。現在は場所にとらわれず、「撮っておいてよかった」と思える一枚を届ける撮影を行っている。

職業

カメラマン 兼 フォトスタジオ運営

仕事内容

お宮参り、七五三、成人式、ブライダル、家族写真、ペット撮影など、お客様の人生の節目や大切な時間を写真として残す仕事です。
ただシャッターを押すだけではなく、緊張している人をリラックスさせたり、子どもが自然に笑える空気をつくったり、その人らしい表情や仕草を引き出すことも大切な役割です。スタジオ撮影だけでなく、庭園や屋外でのロケーション撮影も行い、場所・光・背景・表情を見ながら、「今しか撮れない一瞬」を形にしていきます。
また、学校行事、舞台、建築、商品撮影、ホームページ用写真など、撮影内容は幅広くあります。写真を通じて、お客様が後から「撮っておいてよかった」と思える記録を届ける仕事です。

歴史と仕事の内容を教えてください

原田写真館は、1946年に私の祖父が創業した写真館です。現在は、私と妻と母の3名による家族経営を行っています。私は3代目として、カメラマン兼フォトスタジオの運営を担っています。
現在の拠点は2か所で、街中の原田写真館[西町studio]と、(株)豊田ガーデンが運営する花遊庭の[cottage studio]があります。花遊庭はガーデニングミュージアムとして機能しており、「お庭の博物館」のような役割を果たしています。
業務内容は、成人式、七五三、お宮参り、ブライダル、学校撮影、舞台撮影、建築撮影、物撮り、ホームページ用写真など、幅広い撮影に対応し、単にスタジオの中で記念写真を撮るだけではなく、ロケーション撮影にも対応しています。花遊庭ではこれまで18年間、庭園の中にあるコテージスタジオでも撮影を行い、スタジオ撮影と外での撮影の両方を組み合わせながら、お客様の大切な時間を残してきました。
花遊庭が2026年5月末に閉園となりますが、今後も自然の中で、ロケーション撮影も行っていきます。

この仕事に就いた経緯を教えてください

最初からカメラマンを目指していたわけではなく、大学を卒業するまで、カメラにはほとんど触れてこなかったですね。もともとは海外で働きたいという思いもありましたが、結果としてその道には進まず、父親から「一度、修行に行ってみないか」と勧められたことが、写真の世界に入るきっかけでした。
修行時代は、いわゆる丁稚奉公のような日々で、自分の撮影練習は、朝早く出勤して行うか、仕事が終わった後に居残りで行うしかありませんでした。当時はやりがいや楽しさを感じることはほとんどなく、 叱られることの方が多い日々でした。
それでも続けられたのは、師匠の人柄があったからでした。写真の技術だけではなく、幅広い知識を持ち、様々なことを教えてくれて、怒る時にも愛情があり、ただ頭ごなしに叱るのではなく、成長を願う気持ちが伝わってくる人でした。5年間の修行を経て実家に戻った後も、年に2・3回は写真を持って師匠のもとへ通い、学び続けていました。修行時代を振り返ると、受験勉強と同様で、その時は面白くなくても、後になって「やりきった感」や「楽しかった」という思い出に変わる体験でしたね。

撮影の際に心がけていることは何ですか?

「お客さんファースト、ワンちゃんファースト」という姿勢であることですね。1時間に1組のみの予約制として、急かすことなくゆったりとした撮影環境を提供しています。小さな子どもだと1時間遊んで終わってしまうこともありますし、早く終われば早く終わったで構わないという柔軟な対応で、無理に急かさず、その時間を大切にすることを心がけています。
写真館というと、きちんと並んで、カメラの前で緊張しながら撮るイメージを持つ人もいるかもしれませんが、撮影そのものを楽しい時間にすることで、撮影が終わった後に、 “楽しかった” と言ってもらえるのが一番嬉しいですね。もちろん、出来上がった写真を見て喜んでもらうことも大切です。
私の撮る写真は、いわゆる“きっちり決めた写真”だけではありません。カメラ目線の写真よりも、ふとした仕草や自然な表情に惹かれますね。背景や光、の場の空気を含めて、 「今だ」と感じた瞬間にシャッターを切る。自分の撮影スタイルを言葉で説明することは難しいのですが、周囲からは「理屈ではなく、感覚で撮っている」と言われることもあります。その感覚で撮られた写真を見たお客様からは、「自然な感じがする」「つながりを感じる」 「絵みたい」そんな言葉をもらうことがあります。

この仕事の魅力ややりがいは何ですか?

この仕事の魅力は「記憶にも記録にも残してもらえる」ことにあります。やりがいを最も感じるのは、撮影終了後にお客様から「楽しかった」と言ってもらえる瞬間ですね。ブライダル、成人式、七五三など、どのような撮影でも、この言葉をもらうことが一番の喜びとなっています。
特に印象深いエピソードとして、ある時、高齢で病気を抱えたワンちゃんの撮影を依頼されました。「先が長くないかもしれない」と聞いていたその子は、散歩が好きだったため、外でロケ撮影を行いました。しかし、撮影を行なった翌日にそのワンちゃんが亡くなってしまい、急いで写真を仕上げてお届けした際、家族の方から「撮っておいてよかった」という言葉をもらい、写真の持つ意味と自分の使命感を強く感じました。
成人式の写真も、撮影直後は本人たちにとってそれほど重要に感じられなくても、結婚して家庭を持ち子供ができた時に「撮っておいてよかった」という声をもらうこと が多いです。このように、時間が経過してから写真の価値が再認識される瞬間に、写真家としての存在意義を感じています。

反対に大変なことは何ですか?

ロケ撮影では、暑さや天候に左右されることもありますし、ブライダルなど外部の環境に関わる仕事では、結婚式場の状況や社会情勢の変化に影響を受けることもありますが、大きくマイナスに捉えすぎることはありません。
環境の変化も、自分ではどうにもならないことが起きることもありますが、それも経験の一つ。その時々でできることを考え、目の前のお客様に向き合い続けることが大切です。
写真館の仕事は、華やかな瞬間だけを切り取る仕事ではありません。見えない準備や、環境への対応、体力的な大変さもある仕事です。それでも、その先に「楽しかった」「撮っておいてよかった」という言葉があるからこそ、 続けていける仕事なのだと感じます。

この仕事に就くためにはどうしたら良いですか?

カメラマンになるために、特別な資格は必要なく、誰でもなれる仕事です。しかし、誰でもなれるからこそ、差別化が重要になります。
仕事先で、美容師さんや関係者の方とお話ししている中で、和装撮影ができないカメラマンが増えていることが話題になります。振袖や白無垢、色打ち掛けなどの和装には、昔からの文化に基づいた形の決め方があり、一つ一つに意味が込められています。しかし今は、スナップとして動いている姿を撮ることはできても、和装を正しく理解して撮影できるカメラマンが少なくなっており、だからこそ、これからカメラマンを目指す若い人にとって、和装の知識は大きな武器になると感じています。
また、もう一つ大切なのが、瞬間的な判断力です。
一般のお客様は、プロのモデルではありません。同じ姿勢で長時間撮られ続ければ、疲れて表情も固くなってしまいます。だからこそ、最初の一瞬で判断し、シャッターを切れるかどうか。光、背景、表情、姿勢、空気感、それらを瞬時に見て、決める力が必要になります。
私は修行時代に師匠から「周りのことを見ていなさすぎる」と言われ続けられました。今日の空はきれいか。雲の形は面白いか。この季節、この場所にはどんな花が咲くのか。 人はどんな表情をしているのか。日常の中で、どれだけ周りに目を向けられるか。それが、写真を撮る力にもつながっていきます。

子供の頃の夢を教えてください

私の子どもの頃の夢は、料理人か大工さんでした。どちらも共通して“ものをつくる仕事”で、カメラマンという今の仕事も、形は違いますが、目の前の人や空間を見つめ、一枚の写真としてつくり上げていく仕事ですね。
大学時代も、明確に写真館を継ごうと思っていたわけではなく、家業として期待されている感覚はありながらも、自分から強くその道を選んだわけでありませんでした。それでも、父親の提案をきっかけに修行へ行き、師匠と出会い、気づけば30年。そのうち25年を、原田写真館のカメラマンとして歩んできました。
始まり方よりも、その仕事の中で何を見つけ、どう向き合っていくかの方が大切なのかもしれませんね。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?

私にとって『ハタラク』ということは、もはや特別なことではなく「日常」そのものになっています。30年間カメラマンとして活動してきた結果、仕事をすることに違和感や特別感を感じることはなく、自然な生活の一部として定着していますね。
サラリーマンのように決まった通勤があるわけではなく、週末の方が忙しく、平日の方が少し落ち着く。休日という明確な概念もあまりなく、予約が入っていない日に釣りへ行ったり、犬と過ごしたりする。オンとオフがはっきり分かれているというより、働くことそのものが暮らしの一部になっている感覚です。
この先、大きな環境の変化を迎えても、方針は変えず、やることも、お客様とのスタンスも変えず、これからも写真の仕事を続けていくつもりです。
「僕らが楽しいと思わないことを、お客さんは楽しいと思わない」
だからこそ、自分たち自身が楽しみながら、お客様と向き合っていく。働くことが日常になった今も、その根っこには、お客様に喜んでもらいたいというシンプルな思いがあります。


原田写真館の仕事は、 写真を撮る仕事でありながら、 人の人生の節目に立ち会う仕事でもあります。お宮参り、七五三、成人式、結婚式。そして、家族やペットとの何気ない時間。その瞬間は、撮影している時には当たり前に感じるかもしれないけれど、時間が経った時、その写真は「撮っておいてよかった」と思える一枚になります。
働きがいは、最初からはっきり見えているものとは限りません。続けた先で、誰かに喜んでもらえた時。自分の仕事が、誰かの記憶や人生に残っていると感じた時。その時に初めて、「この仕事をしていてよかった」と思えるのかもしれません。写真を通じて、 人の大切な時間を残す。原田写真館には、そんな静かであたたかい仕事の姿がありました。


【原田写真館】

<西町studio>
〒471-0025
愛知県豊田市西町3-22
Tel.0565-32-0963
Fax.0565-50-8547

<cottage studio>
〒471-0025
愛知県豊田市大林町1-4-1
ガーデニングミュージアム花遊庭内コテージ

<Instagram>
原田写真館. https://www.instagram.com/photostudioharada/
花遊庭cottage studio. https://www.instagram.com/kayuteicottagestudio/