【靴磨屋T.A.N.S.】 本田大志さん

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教えてお仕事

豊田市駅前のコモスクエアの一角で、ひとりの男性が今日も黙々と靴を磨いている。その姿は穏やかで、そしてどこか誇らしげだ。靴磨屋T.A.N.S.を営む本田大志さんは、元々芸人からスタートし、オーダースーツの世界を経て、靴磨きの道に辿り着いた異色の経歴の持ち主。笑いと人とのつながり、そして「光を取り戻す」ことへの情熱を胸に、豊田の街で今日も一足一足に心を込める。


靴磨屋T.A.N.S. / 本田大志さん
1988年愛知県豊田市生まれ。帝京科学大学アニマルサイエンス学部卒業。東京NSC17期卒業後、芸人として3年間活動。オーダースーツ業を経て2019年に靴磨き職人として独立開業。現在は磨きの技術に加え、かつて培った“話す仕事”への情熱も活かし、接客やワークショップでは、トークの面でもお客様に満足していただける存在となっている。

職業

靴磨き職人

仕事内容

革靴の磨きやスニーカーの洗浄をはじめ、お客様の大切な一足を美しく蘇らせる靴のメンテナンス業務。磨きの途中で見つかる傷みには修理で対応する。豊田市駅前の店舗でのサービスに加え、企業やイベントへの“出張靴磨き”も実施。折りたたみ式の専用台を持ち歩き、どこでも磨ける環境をつくりながら、幅広い素材・種類の靴に向き合う仕事。

設立の経緯について教えてください

2019年11月に暖簾分けをしてもらいお店を設立しました。オーダースーツ屋をやっていた時に知り合いが師匠を紹介してくれて、始めは自分の靴を磨きたくてプライベートで教えてもらっていたのですが、元々働いていたオーダースーツの店を辞めようと思っていた時に支店を出さないかと誘っていただいたんです。それから2019年5月から住み込みで3ヶ月修行をしました。豊田市出身で豊田市で店をやっていける人を探していたらしくて、僕がピッタリとハマったんです。師匠も一匹狼で活動しているので、私も一人でフランチャイズとして運営しています。

お仕事の内容を教えてください

靴磨きと靴修理のサービス業です。磨いていると傷みを見つけることもあるので、磨きと修理は隣り合わせの仕事です。革靴を磨く印象が強いですが、“できるだけ断らない”をモットーに、布地のスニーカーも洗浄して対応しています。師匠がやり方を確立して僕に継承してくれました。中には手を出せない素材のものもありますし、状態を悪化させるリスクがある時は、靴を壊さないために見極めと断る勇気も必要です。

このお仕事に就こうと思ったきっかけは何ですか

先にも伝えましたが、芸人とオーダースーツ屋を経て、次の仕事を探した時に、師匠から声がかかっていた靴磨き屋を選びました。それとせっかく蓄えたヒゲを活かせる仕事がよかったんですね(笑)原点は小学生の頃の、サッカーのスパイク磨きかなと思います。当時も磨くのが楽しくて好きだったんです。
生活できるかは不安だったのですが師匠の姿を見て憧れ始めました。靴磨き屋は、自ら門戸を叩けばなれる仕事です。特別な技術よりも、まずは熱い想いを持って飛び込むことが大切です。

お仕事の魅力ややりがいは何ですか?

オーダースーツ屋時代に中古で7万円くらいの革靴を買ったんですが、雨に弱くガサガサになってしまって履くのを諦めていて。その靴を師匠に磨いてもらったことがあったのですが、分かりやすくピカピカになって返ってきた時に感動して、すごく驚いたんです。
喜んでくださるお客様や、反応はクールだけれどリピーターになってくださるお客様と様々な方がいらっしゃるのですが、あの時僕が感じた衝撃や感動をお客様にお届けできているのかなと思えることがやりがいです。

このお仕事の厳しさや大変なことはどんなことですか?

単価が高くないので、収益の面で大きく稼ぐのは難しいですね。「チリも積もれば山となる」仕事です。どれだけニーズがあるかも悩ましいところで、自分で開拓していく必要があります。
地元の人間として、その人脈を活かして仕事を得ることが重要で、恩恵を受けることの大切さは師匠からの教えでもあります。結局のところ、出会った人とのご縁を大切にし、良い印象を積み重ねていくことがこの仕事の基本だと思います。

働く環境について教えてください

豊田市駅前のコモスクエアビルのエントランスの、角のスペースをお借りしています。人の繋がりの恩恵を受けまして、商工会議所のスタッフさんが、ラグビーのW杯開催後に空いたスペースを紹介してくれたんです。プレゼンと交渉を経て特別に借りることができ、現在7年目を迎えます。
また企業への出張磨きも行っており、折りたたみ式の靴磨き台を使って移動式のサービスを提供しています。屋外イベントや他県へ出張することもあります。

子供の頃の夢は何でしたか?

親が公務員だったので、小学校4年生までは当たり前のように公務員を目指していましたが、人前でちょけるのが楽しいと感じて、そこから芸人になりたいと思いました。実際芸人になれたことで小学生の頃の夢を最低限叶えることはできましたね。大スターにはなれなかったけれど4年間芸人をやって、その後オーダースーツ業を4年間やってみて、とりあえずやってみれば何かしらの形になるということが分かりました。

趣味や休日の過ごし方を教えてください

オードリーのラジオを聞くことです。YouTubeがきっかけなのですが、怪談も好きです!幽霊は元々人間で、想いがあるからこそ事件が起きるので、人としてのあり方を怪談から気付かされることがあるんです。YouTubeで芸人さんが怪談イベントをしていることも多く、芸人さんが楽しそうに喋っているのを聞くとワクワクしますね。
定休日の日曜日には、月1回ほど自分が関わっているYouTubeの撮影に行ったり、父の畑を手伝ったりしています。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?

僕にとっての『ハタラク』は、精神が病まない環境で、身の丈に合った生活をするためにやることだと思っています。
今後のビジョンとしては、いつか家庭を持ち、子育てをしたいですね。子どもに自分の脳みそを伝えていきたいと思っています。これからも楽しいことを追求していきたいです。


磨くたびに生まれる光は、靴だけでなく人の心にも届く。“靴を磨く”というシンプルな仕事の中に、人とのつながりや、自分らしく生きる喜びが詰まっている。本田大志さんの姿からは、日々を丁寧に重ねることの尊さが伝わってくる。磨かれた靴を手にしたときのあの感動を、今日も誰かに届けている。


【靴磨屋T.A.N.S.】

〒471-0027
豊田市喜多町2-160 コモスクエアWEST 1F
TEL. 0565-98-0223
FAX. 0565-50-4929
URL. https://kutumigakiya-tans.com
Instagram. https://www.instagram.com/kutumigakiya.tans_toyota/