【株式会社Pleasure Seed】 代表取締役 磯部渉さん

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教えてお仕事

「好きなことを仕事にしたい」。そう思ったことがある人は多いかもしれません。でも実際には、何が“好き”なのか分からないまま、働き続けている人も少なくありません。今回お話を伺ったのは、名古屋市にあるけん玉専門店「FANKEN」を運営する、株式会社Pleasure Seed代表取締役の磯部渉氏。40歳を過ぎてから、自分の生き方と向き合い、たどり着いたのが「けん玉」という仕事でした。
なぜ、けん玉なのか。そして、そこにどんな“働きがい”があるのか。磯部さんの言葉には、『ハタラク』ことの本質が詰まっていました。


株式会社Pleasure Seed / 代表取締役 磯部渉さん
1975年愛知県名古屋市生まれ。愛知工業大学卒業後、自動車関連企業を経て東急ハンズ名古屋店のオープニングスタッフとして勤務。その後ITベンチャー企業で10年経験を積み、2015年に独立。2018年に法人化し、困難を乗り越えてけん玉専門店「FANKEN」をオープン。また、2026年には自社オリジナルけん玉ブランドの立ち上げも予定。小売・EC事業を通じ、日本発祥のけん玉文化を国内外へ広める活動に取り組んでいる。

職業

けん玉専門店「FANKEN」運営(小売業・EC事業)

仕事内容

けん玉専門店「FANKEN」の代表として、インターネットショップの運営を中心に仕事をしています。
具体的には、けん玉の仕入れや商品選定、注文を受けてからの梱包・発送作業、お客様からの問い合わせ対応など、日々の店舗運営を幅広く担当します。
InstagramやWeb検索を活用してお店を知ってもらう発信も重要な仕事のひとつ。イベントや来店販売では、実際にお客様と話しながら商品を紹介し、けん玉の楽しさを直接伝え、けん玉を通じた人と人の「つながり」を生み出す仕事です。
また、世界中で親しまれる日本文化・けん玉の魅力を発信し、年齢や国籍を超えて人がつながる場づくりにも取り組み、日本発祥の文化を国内外に広めていく仕事です。
2026年からは、オリジナルけん玉のブランド開設を予定しています。

御社の概要を教えてください

私は2015年4月に個人事業主として創業し、約3年後の2018年12月に法人化しました。当初はECサイトでの健康食品や美容系商材の販売が中心でしたが、今年から大きく事業内容を転換し、けん玉専門店として売上の95%を占めるようになりました。
けん玉専門店への転換は、大きな仕事のトラブルがきっかけでした。出店していた主要プラットフォームでアカウントが停止され、売上と利益の約80%がなくなる危機に直面しました。その時、以前から取り扱っていたけん玉の専門店をフルコミットしてやろうと決意し、愛知県内では数少ない、けん玉専門店「FANKEN」として、オンライン販売を軸にしながら、月に2~3回は事務所を開放した来店販売や、イベントへの出張販売も行っています。
以前、日本で一番けん玉を作っている山形工房の社長と話す機会があり、その情熱に感銘を受け、自分もけん玉に全力を注ぐことを決めました。

創業の経緯を教えてください

私の職歴を振り返ると、大学卒業後にトヨタ系の工場に1年ほど勤めましたが、全く向いていないと感じ、その後、東急ハンズ名古屋店のオープニングスタッフとして5年間働き、接客の楽しさや仕事の回し方を学びました。さらに異業種に転職し、システムエンジニアとして10年間勤務しました。
システムエンジニアの会社に誘ってくれたのは小学校・中学校からの同級生で、人生の大親友です。しかし働き出して10年経つと出世に差が出てきました。彼は取締役まで出世し、今では会社のナンバー2になっていますが、私は課長止まりでした。同級生の部下として仕事をすることに耐えられず、「独立して社長になる」と決意し、独立しました。
独立後に気づいたのは、これは完全に「うまくいっていない現実から逃げた」ということでした。しかし、負け犬で終わりたくないという思いがエネルギーになり、がむしゃらにこれまで頑張ってきました。もし同級生と会社で同じ立場だったら、おそらく辞めていなかったでしょう。当時の彼と私の違いは、表面的には同じことをやっていても、仕事に対する覚悟が違ったのだと思います。

けん玉の魅力と特徴を教えてください

FANKENでは「つながる」をテーマにしています。人とつながること、けん玉というものとつながることを大切にしています。けん玉は世界中で親しまれており、日本でもアメリカでもヨーロッパでも同じく「けん玉」と呼ばれています。日本発祥の文化ですが、世界中にプレイヤーが広がっています。
けん玉の魅力は、日本中のプレイヤーはもちろん、世界中のプレイヤーとすぐに友達になれることです。畳1畳分のスペースがあればどこでもできますし、性別も年齢も関係ありません。3歳くらいの子どもから80代のお年寄りまで、誰もが一緒に楽しめます。先月広島で開催されたけん玉ワールドカップでは、海外からも149名の方が参加しました。
けん玉があれば誰とでも友達になれます。けん玉ワールドカップには、80代の女性から幼稚園児まで性別・年代を越えて参加されています。当店で買ってくれたけん玉で大会に出る人たちと実際に会って一緒にプレイすることもあります。けん玉を通じて人々がつながっていく手助けになることが、私自身の人生にとっても魅力的で、仕事としてもやりがいを感じています。

職場環境について教えてください

現在の環境は、マンションの一室を借りて事務所としています。ほぼデスクワークで、発送作業や問い合わせ対応などをしています。注文のほとんどはオンラインで、メールやチャットでのやり取りが中心ですね。集客はInstagramと自社サイトからの流入が主で、広告費はほとんど使っていません。けん玉を探している人が多く、供給が需要に追いついていない状況です。
取り扱っているけん玉の価格帯は、お手頃なものだと2,000円台から、高いものだと1万5,000円、2万円近くするモデルもあります。上級者向けには玉だけや剣だけも販売しており、自分好みの組み合わせでオリジナルセットを作る方も多いです。最近は各メーカーが独自のデザインを展開したり、海外ブランドと日本のアパレルブランドがコラボレーションしたりと、スタイリッシュなけん玉が増えていますね。

この仕事に必要なスキルは何ですか?

このビジネスを始めるには、まずパソコンが使えることが必須です。インターネットができて文字の入力ができるレベルで構いませんが、パソコンが全く使えない人には難しいでしょう。また、仕入れをするには最低限の資金も必要ですね。
しかし、最も重要なのは人とのコミュニケーション能力です。特にインターネットビジネスでは、テキストベースのやり取りが多いため、文章だけで誤解を招かないコミュニケーションを取る技術が求められます。対面では表情や声の抑揚などで伝わる部分が、オンラインでは文章だけになるため、自分の意図や誠意をどう伝えるかが重要です。最近ではChatGPTなどのAIを活用する方法もありますが、コミュニケーションの基本は変わりません。

このお仕事の厳しさや大変さはどんなことですか?

インターネット販売は人と対面しないから楽だと思われがちですが、実際にはより難しい面があります。楽天やAmazonなどのプラットフォームを使えば集客はできますが、一人一人に丁寧に対応することが何よりも大切です。
ECビジネスの厳しさは、お客様と直接顔を合わせないことから生じる課題にあります。例えば、けん玉を購入する背景がわからないため、誕生日プレゼントなのか自分用なのかといった情報がありません。私たちにとっては日常的な発送作業でも、お客様にとっては特別な意味を持つ商品かもしれません。配送の遅れや商品の間違いが、お客様の大切な機会を台無しにしてしまう可能性もあります。
目の前にお客様がいないからこそ、自分たちで緊張感を持ち、ただのルーティンにならないよう気をつける必要があります。一つの間違いがお客様の人生の楽しみを妨げてしまう可能性があることを常に意識しています。間違いは起きるものですが、できる限りそうならないよう心がけています。

子供の頃の夢を教えてください

特に明確な夢はなく、「なんとなく会社員になって無難に生きていく」程度の漠然としたイメージしかありませんでしたね。自信がなく、何かを始める前から諦めていたような状態でした。しかし、40歳で会社を辞めて独立する際に初めて本気で人生について考えるようになりました。同級生の出世と自分の状況を比較し、「このままでいいのか」 と考えるようになり、大きな転機を迎えました。独立後は自分自身を好きになり、自分の生き方に自信を持つようになりました。

趣味と休日の過ごし方について教えてください

趣味は、けん玉、マラソンや筋トレ、バイクなどですね。けん玉は最初は仕事の一環として始めましたが、今では完全に趣味となり、けん玉ワールドカップにも参加しています。けん玉は練習すれば必ず上達すること、様々なスタイルや技があること、年齢や性別を問わず楽しめることが魅力です。
休日については、ECサイトは365日営業をしているため完全な休日はなく、仕事とプライベートが入り混じった生活を送っています。家族との時間も大切にしていますが、基本的には「今日は100%休み」という日はありませんね。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?

私にとって『ハタラク』とは、自分のあり方を表現する活動であり、存在理由を表現する場所だと考えています。ただ、年齢や背景、時代によってハタラクの意味は変わってきたと感じており、現在50歳を迎え、けん玉専門店を通じて自分の生き方を表現し、人とのつながりを大切にすることが幸せですね。
最終的なビジョンとして、けん玉を通じて人々がつながり、平和的な交流ができる世界を目指しています。


「何者でもなかった自分が、好きなものを通して、人とつながっていく」磯部さんの仕事は、けん玉を売ることではありません。けん玉を通じて、 “人の人生の一部”に関わる仕事です。もし今、「やりたいことが分からない」「働く意味が見えない」そんな風に感じているなら、FANKENという場所をのぞいてみてください。
そこには、“働くことが、生き方になる”ヒントが、きっとあります。


【株式会社Pleasure Seed】

〒462-0809
愛知県名古屋市北区上飯田西町2-20-1B

<けん玉専門ショップ FANKEN>
URL. https://fanken.jp
Instagram. https://www.instagram.com/fanken2025