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【法務省 中部矯正管区 矯正就労支援情報センター室(通称:コレワーク中部)】 室長 高山孝吉さん

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教えてお仕事

「犯罪を防ぐ仕事」と聞いて、どんな職業を思い浮かべるでしょう。
警察官、検察官、裁判官…。そんなイメージが浮かぶけれど、日本の治安を支えている仕事は、それだけではありません。“犯罪が起きない未来をつくる”ために、静かに、粘り強く、人と向き合い続ける仕事があります。
今回お話を聞いたのは、法務省 中部矯正管区 矯正就労支援情報センター室(通称:コレワーク中部)の室長 高山孝吉さん。刑務所や少年院に収容されている人たちの「社会復帰」と「就労」を支える仕事に対する想いと、『ハタラク』ことの意味を伺いました。


コレワーク中部 / 室長 高山孝吉さん
1980年大阪府生まれ。同志社大学文学部心理学専攻卒業。知的障害者施設での勤務を経て法務省に入省し、少年院・刑務所・矯正管区で幅広く要職を歴任。2025年より中部矯正管区矯正就労支援情報センター室長。犯罪の未然防止と社会復帰支援に向き合い続けている。

職業

国家公務員(法務省職員)
中部矯正管区 矯正就労支援情報センター室

仕事内容

刑務所や少年院に収容されている人が、出所後に社会で働き、再び犯罪に戻らないようにするための「就労支援」を行う仕事です。
具体的には、収容中の人と面談を重ねながら希望や課題を整理し、どんな仕事をしたいのか」「働くうえで不安なことは何か」を丁寧に聞き取ります。そのうえで、協力して受け入れてくれる企業を探し、施設と企業をつなぐ役割を担います。仕事の現場はデスクだけではありません。実際に企業への訪問や説明、採用面接の調整、リモート面談の実施など、法務省の中でも“外に出て社会とつながる”ことが多いのが特徴です。
「働く場所が決まる」ことはゴールではなく、再び犯罪に戻らず社会で生活していくためのスタート。その一歩を支え、将来の犯罪を防ぎ、日本の治安を守ることを目的とした社会的意義の高い仕事です。

組織の概要を教えてください

コレワークは、刑務所や少年院に収容されている人たちの就労支援を専門に行う、法務省の組織です。正式名称は「矯正就労支援情報センター室」。その中で中部エリアを担当しているのが、コレワーク中部です。設立は2016年。当初は東京と大阪の2拠点のみでしたが、2020年以降、全国8拠点へと広がり、現在は4人の職員で中部エリア(東海3県・北陸3県)をカバーしています。
この組織が生まれた背景には、ある深刻なデータがあります。再犯で刑務所に戻ってくる人の約73%が無職であり、犯行時に仕事に就いていない人は、就労している人に比べて再犯率が約3倍もあることから、「出所後に働ける環境を整えることが、再犯防止の鍵になる」という考えのもと、コレワークは立ち上がりました。

お仕事の内容について教えてください

コレワークの仕事は、一言でいえば「人と仕事を、社会につなぐ仕事」です。具体的には、刑務所や少年院にいる人たちと面談を行い、希望や状況を聞く。それをもとに協力してくれる企業を探し、事業主と面談し、仕事内容や受け入れ体制をすり合わせていきます。最終的に施設と企業をつなぎ、採用面接を調整する。という内容です。
特徴的なのは、法務省の仕事なのに、外に出ることが多いという点ですね。従来の仕事はいわゆる塀の中が中心でしたが、コレワークは、外向きの窓口。デスクワークよりも、事業主の方と話す機会のほうが多いです。出張も多く、月によっては半分以上が外回りをしている月もあるくらいです。
コロナ禍を経て、最近ではリモート面接も活用し、愛知県の施設と北海道の企業をつなぐこともあります。

なぜこの仕事に就こうと思ったのですか?

原点は、「人と関わる仕事がしたい」という思いでした。大学では心理学を学び、対人援助職に興味を持つようになりました。その中で選んだのが、法務省の専門職である“法務教官”という道でした。
少年院の中で、昼も夜も少年たちと向き合う日々は、正直ものすごく大変な仕事で、大げさに言うと365日のうち、360日は「もう辞めたい」と思いながらも、残りの5日が、全部を帳消しにするくらいの感動をくれ、「この仕事をやっていて良かった」と思える仕事でした。人が変わっていく瞬間を、真横で見られることは、何ものにも代えがたい経験でした。
その後、コレワークに関わる中で、「施設の中だけじゃなく、外にどうバトンをつなぐか」ということを視野を広げて考えることができるようになり、この仕事の重要性に改めて気づきました。

この仕事の魅力ややりがいは何ですか?

「将来の犯罪を防ぐこと」ですね。犯罪や非行をした人が、社会に戻り、働き、再犯しない。それは、新たな被害者を生まないということです。それが結果として、日本の治安を守る仕事だと思っています。「未来の治安を守る」と考えると、すごく意義のある仕事だと感じています。すでに起きた犯罪に向き合うだけでなく、“これから起こるかもしれない犯罪を減らす”ことが、コレワークの仕事です。

反対に大変なことは何ですか?

この仕事を行う上で、「加害者を支援するなんて、おかしいんじゃないか」という声を向けられることも、少なくありません。被害者の感情を思えば簡単な話ではなく、葛藤もあります。それでも、被害者のことを考えるからこそ、再犯を防がなければいけません。その両立は、簡単じゃないし、正直厳しいです。加害者と被害者、どちらかに偏ることなく向き合う。その重さを背負うのが、矯正就労支援の仕事でもありますね。

施設に収容される人たちの背景について教えてください

収容されている人たちの背景を見ると、本人の責任はもちろんありますが、環境の影響も大きいことがわかります。家庭環境や生活環境を聞くと、「もう少し違っていたら、この子は犯罪を犯さなかっただろう」と思うことも本当に多いのです。
少年院での具体的なエピソードをお話しすると、雑巾の絞り方がわからない子がいました。親に教えてもらえず、学校にも行っていなかったからです。給食で魚に骨があることを「不良品じゃないか?」と申し出る子もいました。お弁当の出来合いのものしか食べたことがなく、鮭やサワラの切り身だけが魚だと思っていたのです。部屋の蛍光灯が切れても、どうすればいいかわからずに真っ暗な中でポツンと座っている子もいました。何をすればいいのかわからなかったのです。こうした基本的な生活スキルが身についていない背景には、適切な大人が周りにいなかったという環境があります。
犯罪の背景には、生育環境や生活環境の影響が色濃くあります。だからこそ、出所後の「働く場所」や「居場所」が重要だと考えています。

この仕事に就くためにはどうしたら良いですか?

法務省で働くには、国家公務員の採用試験を受ける必要があります。法務教官、刑務官など、専門職試験を受けることで、その職に就くことができます。

子供の頃の夢を教えてください

明確になりたいものがあった訳ではないのですが、子どもの頃は、白衣への憧れから、理科の先生や研究職になりたかったと記憶しています。大学で心理学を学んだのも、白衣を着られるからという思いもありました。
最終的には、心理学を活かし人と関わる仕事に興味があったので、現職を志しました。

趣味と休日の過ごし方について教えてください

趣味らしい趣味ではないですが、謎解きが好きで、アトラクションのようなタイプや、街歩きをしながら楽しく謎解きをしています。
休日は、小学2年の娘と一緒に過ごすことが多く、謎解きに一緒に行ったり、公園や行きたいところに行ったりと、体験や経験をプレゼントするようにしていますね。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?

私にとって『ハタラク』ということは、「生活の糧」を得るためではありますが、お金の為だけではなく、いろんな人に会い、いろんな考えに触れることが楽しいです。仕事を通じて視野が広がり、価値観が揺さぶられることで自分自身も変わってきました。それが、結果的に社会貢献につながっていたら、こんなに嬉しいことはないですね。
この先のビジョンとして、加害者だからといって一線を引くのではなく、“頑張ろうとしている人もいる”と自然に思ってもらえる社会。被害者の方にも、当たり前に手を差し伸べられる社会になるように、そのハードルを少しずつ下げていくきっかけを作っていけたら良いなと思っています。


コレワーク中部の仕事は、決して派手ではない。けれどその一つひとつが、未来の治安と、誰かの人生を支えている。人と向き合い、社会と向き合い、簡単な答えのない問いに立ち続ける。それが、この仕事の本質です。「誰かの立ち直りを、仕事で支える」そんな働き方に、少しでも心が動いたなら、この仕事は、あなたの選択肢になり得るかもしれません。


【法務省 中部矯正管区 矯正就労支援情報センター室(通称:コレワーク中部)】

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