【NPO法人あおいろノソラ】代表理事 榊原妙さん
「母として、まだ何かできるのでは」難病の息子と共に過ごす日々から生まれた想いが、今、多くの家族の未来を照らしています。障がいのある子どもたちとその家族が、もっと自然体で暮らせる社会を。そんな思いを胸に活動を続けるNPO法人あおいろノソラ。その歩みのはじまりには、ある母の強い想いがありました。今回は、代表理事の榊原妙さんに、団体設立の経緯や現在の活動、そして『ハタラク』ということへの想いを伺いました。
NPO法人あおいろノソラ / 代表理事 榊原妙さん
1975年愛知県尾張旭市生まれ。聖霊短期大学卒業後、金融業の事務職を経て、結婚・出産。難病を抱える息子の育児を通じて料理家としての活動を始め、中学時代の息子の姿に感化されNPO法人を立ち上げる。「光にあたれない子どもたち」のための“居場所”や“味方”をつくる活動と、魅せる料理家としての発信を通じ、社会に温かなつながりを届けている。
職業
・NPO法人
・魅せる料理家仕事内容
紫外線にあたれない進行性の難病の患者と、その家族が生きやすい社会を作る為の活動をしているNPO法人の運営
─NPO法人とは?
NPO法人とは、特定非営利活動促進法に基づいて設立された法人格を持つ非営利団体です。NPO(Non-Profit Organization)は、非営利活動を行う団体全般を指す言葉であり、NPO法人とは、その中でも特に法人格を取得したものを指します。
法人の設立の経緯について教えてください
当法人の設立のきっかけは、息子の存在です。私には、色素性乾皮症(XP)という難病を抱え、歩行することも困難な息子がいます。そんな息子の中学3年生の運動会の時、担任の先生と手を取り合いながら、60メートルを走り切った姿を見て、「母として、まだ何かできるのでは」と胸を打たれ、息子をもっと応援できるように、行動しようと決意しました。2022年に息子の名を冠した「たっくんプロジェクト」として活動をスタートし、2024年にNPO法人化しました。
団体の構成は、役員4名・正会員6名の計10名で、全員がNPO一本ではなく、本職と両立しながら活動しています。

活動の概要を教えてください
目指しているのは、息子のような『色素性乾皮症(XP)』を抱える人や、さまざまな難病や障がいがある人たちにとっても、誰にとっても“住みよい社会”をつくることです。「健常者と障がい者の間にある“過剰な垣根”をなくすこと」を目的に掲げて、障がいの有無にかかわらず、誰もが自然体で過ごせる空間をつくるために、紫外線を遮る全天候型の「クリアドーム型バリアフリー公園」の実現に向けて活動しています。具体的には、色素性乾皮症(XP)という難病への理解を促す絵本の制作・販売や、障がい者が安心して店舗を利用できる「おてつだいシール」を全国の店舗に向けて展開しています。その他にも、難病児を育てる13家族によるLINEグループと交流会の運営や、高額な紫外線カットフィルム費用の助成を求める国への啓蒙活動も行なっています。
詳しい活動内容を教えてください
愛知県を拠点に、静岡や岐阜など全国のイベントにも参加しています。朗読と音楽で届ける”たくみの一座”としての絵本の読み聞かせの活動や、医療関係者向けの展示会など、活動の場は広がり続けています。“たっくん”というキャラクターと共に、いろんな場所で出会いや共感が生まれています。
今は、クリアドーム公園の実現に向けた第一歩として、防護帽子の製作に対して企業から助成金をいただくなど、次のステップに進み始めているところです。

このお仕事のやりがいや魅力はどんなところですか?
やはり、私たちの活動が誰かの支えになっていると実感できたときですね。たとえば、以前、息子たちを連れてアメリカへ旅行へ行ったことを書いたブログが、XP患者さんの家族の背中を押していたり、SNSで発信する息子のリハビリ動画が、他の難病を持つ方の励みになっているという声をいただいたり。そうしたお声が何よりのやりがいです。

一方で、大変だと感じることはどんなところですか?
障がいや病気への理解がまだまだ不十分だと感じる場面も多いですし、NPOの中でも、同じ方向を向いて活動するための“共通認識”を持つことの難しさは常に感じています。でも、かつては自分も障がいと無縁だったからこそ、わからない人の立場に立って、丁寧に伝えることがとても大事だと思っています。想いだけでは伝わらない。だからこそ、言葉を選び、伝えていくことが大切ですね。
このお仕事を始めるためにはどうしたら良いですか?
まずは、志を共有できる仲間を見つけることが第一歩だと思います。私の場合は、本業の料理研究家としてSNSなどで発信を続ける中で、活動に共感してくださる方が集まってくれました。その後、団体としての規約を定め、行政書士の先生の力も借りながら、正式に法人化しました。
趣味や休日の過ごし方について教えてください
料理は本業でもありますが、私の大切な趣味でもあります。特に野菜を千切りしたり無心になれる作業をしている時は、頭の中がスッと整理されて、リフレッシュできますね。 休日は息子とゆっくり過ごすことが多いです。でも時には、ライブに行ったり、料理をしたりと、心のガス抜きになる、自分のための時間も忘れないようにしています。

最後に、あなたにとって『ハタラク』とは何でしょうか?
私にとっての『ハタラク』とは、お金を生むことだけでなく、人と繋がり、チャンスを広げることで、笑顔で生きるための、ポジティブでいられるためのツールだと思っています。 活動を通じて、さまざまな人との出会いや学びが自身の成⻑につながり、自分自身の “生きる意味”も深まっていく気がしていますね。
榊原さんが踏み出した小さな一歩は、今、同じように悩みながらも前に進もうとしている多くの家族にとって、大きな光となっています。「特別」ではなく、「当たり前」を広げていく。NPO法人あおいろノソラの挑戦は、これからも優しく、そして力 強く続いていきます。
【NPO 法人あおいろノソラ】
URL. https://www.uvcut.info

